私が絶景紅葉の世界に入り浸るようになったきっかけがここかもしれません。
立山黒部アルペンルートの入り口。
タンボ平。
アクセスは極めて容易です。
電気バスとケーブルカーを乗り継ぐと、ここにたどり着くことができます。標高1,828mの黒部平。
電気バスを降りてからケーブルカーまでは少々歩きますが、基本は平たんな道。つまり相当に年齢を重ねてからでも来ることができる場所、ということです。
ここでの絶景撮影ポイントは体力的負担の極力ないというポイントで紹介できる場所が3か所あります。そして多少動ける(登山レベル)ならあと1か所挙げることができます。
第1のポイントは、ロープウェイ乗り場の建物の屋上展望台です。
どうですか、この絶景。
苦労して山を登る必要なく、汗を全くかかない状態でこの場所に来ることができるなんて本当に幸せです。
そして何よりも、朝一番で動き出せば、7時半過ぎにこの場所に立てるのです。
この日も時間が進むほど雲が多くなってきてしまいました。
朝一番の快晴、そして澄んだ空気の中で味わう絶景紅葉。
この至福の時間を過ごすことができたことから、私の紅葉絶景巡りが始まったと言っても過言ではありません。
実はこの訪問は2008年のことです。
随分前のことになり、当時はデジカメもまだまだ持っていない人の方が多いのでは、というくらいの普及期でした。
私も基本はフィルムカメラで、リバーサルフィルムを装填(双眼鏡左脇の三脚に乗っているカメラです)。デジカメはたしか200万画素レベルのものです(2,000ではなく200万画素です!)。
今とは性能の比較のしようもありません。正直色の出方も不自然です(撮影後の補正加工もしていないこともあり)。
最高の場所でしたが、自分で納得のいく写真を撮ることはできませんでした。
いつか必ずリベンジをと思っている場所の一つです。
リバーサルフィルムで撮った写真をデジタル加工して掲載します。少しでもこの場の素晴らしさお伝えできればと思うのですが、どうでしょうか。
感じは出ているとは言えますが、どうにも人を惹きつけるレベルの写真になっていません。正直紅葉のピークは過ぎています。
おそらく3日くらい遅かったという所でしょう。
その関係で茶褐色の色合いが強くなってしまっています。また天気がどんどん崩れて生きていることもあり、抜けるような青空ではなくなり薄日が差すような状況にもなってきてしまい、PLフィルターの効果もあまり出ていません。
まあ何とか及第点、と言えるのが望遠で、まだ紅葉の葉が残っている部分をクローズアップしたこちらの1枚でしょうか。
珍しく今回は標準ズームよりも望遠ズームの登場機会が多い場所となりました。
ロープウェイの左側の方が雄大な景色が広がっているのですが、右側の方もまだ紅葉は残っていました。それこそ3日程度早く来ることができていれば、ロープウェイ左側の斜面の色付きは本当に素晴らしい状況だったことでしょう。毎日通うことができるのであればそのピークに巡り合うこともできるでしょうが、休みが週末だけのサラリーマンにとっては、しょせんそれは無理な話。この時はこの絶景に出会うことができただけでも十分満足でした。
そしてもう一枚、展望台からロープウェイを撮ったものを載せておきます。
まずお気づきになられる方はいないでしょうが、そうなのです。ロープウェイの色が今と違って、赤と白のコントラスト色だったのですね。
さて、展望台からの撮影に満足できたなら、次はいよいよロープウェイです。
ここが体力不要の撮影ポイントその2です。
ここでのポイントは何かと言えば、焦らないこと、そして陣取りです。
大事なポイントは、慌てて次の発車のロープウェイに飛び乗らないことです。ただし、この時初めて訪れた際には意図したわけではありませんでした。偶然にも恵まれた状況になり、ロープウェイ内の前方部分の、最高の場所を確保することができました。
何かといえば、ロープウェイ上部側の窓際の位置を確保できたのです。
今のロープウェイは実はモデルチェンジしてしまっているので次回訪問して確かめないといけないのですが、当時は窓が開きました。
つまり、窓際イコール窓による反射がない状態で撮影を存分に楽しめたのです。
残念ながら200万画素カメラでの写真しか今は残っていないので、その絶景をお伝えすることができないのですが、右の2枚の写真から雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。
ロープウェイなので強風の際には揺れてしまいますが、その日は快晴無風と言ってもよい状態。とは言え、それなりのスピードで移動していることは間違いありません。
シャッタースピードは高速にしないとしっかりとした写真は撮れません。
こういう時はカメラのオート機能は重宝します。結果として右の写真では1/500秒での撮影で、ブレは感じられず、しっかり絶景を切り取ってくれました。
一方で、フィルムカメラであればISO感度の高いものを使わないといけない、という問題にも直面します。
私が今でも愛用するリバーサルフィルムのISO感度は50です。これでは移動体の中での撮影は極めて困難です。デジカメの機能が本当に進化した現在は、こういったところの撮影も何ら心配することなくどんどんチャレンジできるので、あとはその場にいること、が基本中の基本。そちらのほうが大事な要素、ということですね。
F8で手持ちでチャレンジした写真も一応載せておきます。
何とかブレずに写っていました。晴天のおかげです。
さて、ロープウェイからの絶景を堪能した後は、いよいよ大観峰からの絶景を担当する時間です。
ここも展望台がしっかり整備されています。撮影ポイントその3です。
そして有難いことにその時はそこでも写真撮影をする方は休日にもかかわらず皆無、という状態。思う存分堪能することができました。
ただしどこをどう切り取るか、ここにはやは力量差が出ます。
もともとここを訪れたい、と思ったのは、ある写真家の出版物を見て、その光景の素晴らしさに目が釘付けになり、ぜひこの絶景を自分も写真に収めたい、と思ったことがきっかけです。写真を撮った場所はまず間違いなく同じ場所のはずです。でも結果にはやはり大きな違いが。
もちろん気象条件等が違えば同じような写真を撮ることは無理ですが、それはいいわけでしかないでしょう。
やはり感じるのは光を読む力の差でしょうか。そして何を主題として、どの部分をアクセントとして写し込むか、という差と感じています。
今のデジカメであれば多少の構図の差をつけて何枚も何枚も撮ってくることが可能ですが、リバーサルフィルムの当時は、この一枚、と自分なりに追い込んだ構図でシャッターを切ったはずでした。
こういう思いがあるからこそ、またここに行きたいのですね。
果たして再訪した際にはどのような写真を撮る腕前になっていることか。我ながら楽しみにしています。
ただしここからは、斜面に向けて横方向に狙うものと、黒部湖の方にカメラを振って下部を狙う2つのアングルを楽しむことができます。
この時は黒部湖を狙うアングルの方が、逆光気味に紅葉の木々を照らしてくれることから良い感じの写真が撮れました。
また上部は終わりかけの感じでも下部の方がキレイな色付きの木々が多かったこともあってこちらの写真の出来の方が良い、という結果でした。
現場では上述のある写真家の写真のイメージが強すぎて、この下部の木々の素晴らしさが今一つ印象に残っていなかったのですが、いま改めて見てもいい感じの紅葉を切り取っているようには思えます。
さて、大観峰での撮影を堪能した後は、室堂まで行こうか迷いました。
あまり事前調査ができていなかったこともあり、紅葉の進み具合がよくわかっていなかったこともあり、逡巡したのですが、
今であれば
がありますから、大観峰で紅葉後半であれば、室堂の紅葉は終わってしまっていること一目瞭然ですよね。
本当にネット情報の進化は素晴らしいし、有難いものです。
結局、黒部平に戻り、そこから上部を目指して登山道を歩くことにしました。
もちろん初めての場所ですし、下調べも不十分。
行けるところまで行こう、と思って登り始めました。
それほどきつい登りではなく、15分くらい進んだでしょうか。やはり黒部平の展望所から見る光景とは一味違う山岳風景を目にすることができました。
15分程度までの場所であればスニーカーでも大丈夫かな、というようなところですので余裕があればぜひ足を運んでみていただきたいな、と思います。
ここでもリバーサルフィルムで撮った写真をデジタル加工して掲載します。少しでもこの場の素晴らしさお伝えできればと思います。ここが撮影ポイントその4です。
一方で、その先もどのような光景に出会うことができるか、とワクワクしながら登っていったのですが、約1時間頑張っても残念ながら先ほどの光景を上回る場所に出会うことはありませんでした。
せいぜい取れた写真がこちらのもの。
お世辞にも素晴らしい、と言えるものはありませんでした。
帰路のバスの時間もあるため、ここまでで断念。来た道を引き返すのでした。
そして後はケーブルカーとバスを乗り継いで扇沢駅(バスターミナル)に戻ります。
ケーブルカーで黒部湖まで下りてくると待っていたのはダム放水の場面とこのような感じの紅葉でした。
ダム堤防の上から下流方向を臨んだ光景で、タンボ平が終わりかけの状況まで紅葉が進むと、ここまで紅葉前線は下りてきている、ということがわかります。
この後、黒部ダム近辺の紅葉が進んでいく、ということですね。
その時にはどのような光景が見られるのか。機会があれば来てみたいものです。
朝6時半の始発で扇沢を出発してから約9時間半の撮影の旅でした。
初訪問でありながら、十分な価値を感じた旅となりました。
訪問撮影日:2008年10月8日