今回は大変有名な観光地といってもよい上高地のご紹介です。
上高地は一般観光客から本格的クライマーまで大変多くの人が訪れる場所。河童橋から臨む穂高連峰の写真はきっと多くの人が目にしたことがある風景と思います。
その上高地を新緑の時期に気軽な気持ちで訪れるとするとそのような光景に出会うことができるのか。それが今回のご紹介の内容になります。
登山靴でなくてもスニーカーで十分回ることができる場所ばかりをご紹介しますので、初級編としてあります。中級編はまた別途ご紹介します。
さてその上高地ですが、週末風景写真家にとって東京からのアクセスはやはり夜行バスです。
さわやか信州号(アルピコ交通)、毎日アルペン号(毎日新聞旅行)がシーズン中、基本的に毎週末は運行しています(平日等の詳細はそれぞれのサイトをご確認ください)。新宿等から夜11時ごろ出発し、翌朝5時ごろ上高地に到着します。
時間に余裕のある方は山小屋等で一泊されるのがお勧めですが、私の場合は多くの場合で日曜日しか休みが取れないため、土曜日夜の夜行バスで現地に向かい、日曜午後の復路便で帰ってくるという強行軍です。それでも現地には10時間近く滞在することができるので十分撮影を楽しむことができます。
それでは実際の上高地のご案内を始めましょう。
まず、目的地ですが、バスの終着駅である上高地バスターミナルまで行くことはこの時期であればお勧めしません。一つ手前の大正池で下車しましょう。大正池ホテル前で下車することができます。そこには公衆トイレもありますので、まず身支度を整えて、すぐ目の前に広がる大正池のほとりにぜひとも足を運んでほしいのです。
天候次第ではありますが、朝5時はもう明るい時間帯です。
もし好天に恵まれれば、ここに掲載したような光景が目の前に広がっています。
すぐにでも撮影機材の準備に入りたいと思われるでしょうが、まずが右手奥のほうに進んでいき、撮影のための良いポジションを確保することからその日の行動を開始しましょう。
夜行バスで到着したと言っても、前日から宿泊されている方々もいらっしゃるので、すでに最高のポジションは確保されてしまっているかもしれません。先約の方の邪魔にならないような場所に三脚をセットするマナーは守ってくださいね。
三脚のセットが終わったらぜひ周囲の光景を楽しんでいただきたいと思います。穂高連峰とは反 対側に位置する焼岳は早い段階から日の光が当たり始めます。そちらを狙うのか、あくまで穂高連峰のほうを狙うのかは決めたほうが良いでしょう。朝もやがうまい具合にかかっていれば、平板になりがちな焼岳方面より断然、狙うは穂高方面ということになります。
朝もやを狙うのであれば刻々と情景は変わっていきますので、早くも臨戦態勢、ということになるでしょう。フィルム時代ではためらうような場面でも、デジカメになったことで本当にためらいなくシャッターを切ることができるようになったのはアマチュアカメラマンにとっては本当にありがたいことです。
だんだん日が昇ってくると朝もやも消えてしまうでしょう。そのころには左側にも日が回り始めます。新緑の色合いを狙う上では、左手にも気を配っておきましょう。
そして、そのあとはどのような交戦状態になった時をその時の自分の最高の瞬間とするか、ここはあらかじめイメージトレーニングすることができれば素晴らしいです。手前の新緑の部分と穂高連峰そのもの療法について、どの程度まで光が回ってくるまで待つか、ということです。
完全に光が回るまで待つとなると実は相当な時間をここで過ごすことになります。目途としては朝8時ごろ。つまりバスを下車してから3時間程度粘る必要が出てきます。それはそれで天候によっては十分価値があるでしょう。ですがもし1回の訪問で上高地を堪能したいと思う場合はもう少し早く切り上げたほうが良いでしょう。
次ページの写真ではあえて右側は影の状態でよいな、と判断しそれがこの日1番の出来栄えと思える写真に仕上がりました。日時は5月28日、午前7時を少々回ったところです。
<新緑の大正池から臨む穂高連峰>
大正池を満喫したら、上高地バスターミナル(河童橋)目指してハイキングを始めましょう。平坦なコースで、1時間程度で河童橋に到着する距離です。しかしフォトグラファーにとっては、とても1時間では無理です。所要時間2時間は河童橋まででみておきましょう。
大正池を越えるともうすぐに次の撮影ポイントに到着です。
上の写真は梓川のほとりで、ここの先(写真で言えば左手下(手前奥)に大正池が広がる広い河原があります。朝食を広げている方も多い場所ですが、とても清々しい空気感を感じられる場所です。
そこを越えると、梓川からは少々離れたハイキングコースに入っていきます。そしてこの次の写真のように進行方向に穂高連峰が見える場所が数多くあるので、本当に立ち止まってシャッターを切りだしたら止まらなくなってしまうかもしれません。ある程度にして先に進みましょう。
しばらく歩くと田代湿原に到着です。ここも頻繁に取り上げられる場所ですから、風景写真を楽しむ方にとってはお馴染みの場所です。個性あふれる写真を撮るのは週末フォトグラファーにとっては難しいので、記念写真として撮影しておくポイントでしょう。
<新緑の上高地・田代湿原>
そして立ち寄るのを忘れてはいけないのはこの田代湿原の右手奥に広がる田代池です。
<新緑の上高地・田代池>
写真でお分かりのように、新緑の上高地の中でここだけ色が異なります。
池が浅いことと、水の流れが穏やかだからでしょうか。なんとも異なる雰囲気ですが、不思議と違和感が全くなく、とても良い気を感じる場所です。決して大きくなく、また撮影する場所も極めて限られているのですが、なぜか長居したくなってしまう空間です。
田代池を満喫した後は再び河童橋に向けてハイキングコースに戻ります。田代湿原を越えて先に進んでいくとまた梓川ほとりに出ます。ほんの少し場所が変わるだけで雰囲気も変わります。三脚は締まってもまたすぐ取り出すことになること間違いなしです。
その先に進むと、田代橋、穂高橋があります。ここは梓川の上にかかっている橋のため、梓川と穂高連峰と一緒に取るには良い場所です。
唯一、近隣のホテルがどうしても入ってしまうのが難点です。
このくらいの移り具合であれば、デジカメの画像処理(レタッチ)で消してしまうことも可能でしょうが、私としてはどうしてもそれはなじめません。
リバーサルフィルム時代のありのままの情景を切り取った上での写真として楽しみたいので、右の写真のような映り込みは残したままです。
その先は梓川左岸コースト梓川右岸コースのどちらであっても河童橋に到達できます。
初めて訪れるのであればウェストン碑に行きたいという方も多いでしょう。そうであれば右岸コースを進んでください。右岸といっても河童橋に向かう場合は左側ですのでご注意を。
私の選択は右岸コースです。そうすると梓川右側の木々が半逆光の状態になり晴天であれば本当にきれいだからです。
その雰囲気はとても私の筆力では表現しきれませんし、写真でもとても伝えきれません。まさに百聞は一見に如かず。是非現地を訪れてほしいと思います。どこをどのように切り取るか。ウェストン碑近辺も対岸の木々の新緑の輝きは本当にきれいです。ですがそのあとの行程を考えるとあまりここで時間を使うのも考えものです。特に初訪問時であれば、三脚をセットしてじっくり、というスタイルではなく、手持ちでスナップ写真を撮るくらいの気持ちで先に進んだほうが良い かもしれません。因みにここに掲載の写真はウェストン碑からは少々先に進み、もう少しで河童橋が見えてくるか、というくらいの場所で、六百山方面を臨んだ半逆光のものと、そこから振り返った焼岳(完全な順光であることおわかりでしょう)です。
そしてここを過ぎるといよいよ河童橋です。
あえて写真は載せません。
ここでどのような写真を撮るかはそれこそ千差万別でしょう。記念写真も当然撮っておきたいところですよね。
観光シーズンであればいつ行ってもこの河童橋は人の波が絶えることはありません。あまり長居することなく撮影ポイントを探しましょう。
<河童橋からの望む穂高連峰>
ただし一つ注意は橋の上では記念写真だけで三脚をセットするのはやめましょう。理由は二つ。まず一つは他の観光客の方の邪魔になる可能性が高いこと。もう一つは橋の上は振動が結構あります。記念写真同様高速シャッターを切る分には問題ありませんが、絞り込んで撮影をする場合は三脚を使って手振れを排除したとしても、橋の揺れによる影響がおそらく回避できないと思います。上の写真は橋の横手のコンクリートの階段上から撮っています。ここであれば全く故の心配はない場所です。
それ以外は橋を渡って左手先にしばらく進んだところも私の好きなポイントです。梓川が蛇行しているので、少し場所を変えるだけで雰囲気の変わった写真を撮ることができます。是非あちこち場所を変えて都度ファインダーをのぞいてみてください。
そしてもう一度橋を渡りなおして次は小梨平キャンプ場に向かいましょう。
梓川のきれいな流れが河童橋のところで感じるよりもさらに間近で感じ取れます。穂高連峰の雰囲気も変わります。川沿いに歩き回ってここでもお好みの撮影ポイントを探してください。
私の好きなポイントはこちら。
流れは穏やかな場所ですが、その分、水のきれいさと新緑の木々のみずみずしさを感じることができ、かなりの時間この場にとどまっていました。
次に向かうのは、岳沢湿原。
再び河童橋まで戻ってその先に進みます。もちろんだけ沢湿原を先に行き、そのあと小梨平キャンプ場に戻る歩き方でも一向に構いません。
欲を言えば、岳沢湿原に行くのはかなり早い時間のほうが良いと思っています。この辺りは自分なりのルート決めをしたうえで、当日の行動に移っていただきたいところです。
1日で主要ポイントを回ろうというのは正直無理があります。自分の好みの場所がどこか。2度、3度足を運ばないととても上高地の良さを味わうことはできない、という点はお含みおきください。
なお、岳沢湿原の撮影ポイントは2か所です。
1か所は湿原の中央に鑑賞できる板張りの場所が用意されています。それなりの広さがあるので三脚を立ててもそれほど邪魔にはならないところです。
そしてもう一つは岳沢の登山口方面に進んで、そこから湿原を振り返る場所です。湿原全体を見渡すことができませんが、その日の状態がどのようになっているか、時間帯によっても異なりますが、確認しておいて損はないポイントです。
さて、岳沢湿原での撮影を終えて、まだ時間があるようでしたら、明神池に足を延ばすのが良いでしょう。
2.5km約50分とガイドマップ上では表記されています。スニーカーでもなんとか行ける場所です(トレッキングシューズのほうがベターです)
途中、梓川沿いから明神だけを臨んだ光景がこちらです。晴天であればここでも清々しさを感じることができるでしょう。
そして明神に到着すれば、そこで嘉門次小屋名物のイワナの塩焼きを食べるもよし、穂髙神社奥宮の境内にある明神池に行き撮影を続けるのも良し、休日を思う存分楽しんでほしいと思います。
https://www.kamikochi.or.jp/learn/parkmap
上高地観光旅館組合 上高地公式サイト(https://www.kamikochi.or.jp/)より引用